星野国賠 結審 暁子さん堂々の意見陳述
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- 2月6日
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5年わたり東京地裁で争われてきた星野国賠は1月23日の暁子さんの意見陳述をもって結審しました。
判決は3月24日。以下暁子さんの意見陳述です。
意 見 陳 述 書
2025年1月23日
東京地方裁判所民事第14部2D係 御中
原 告・妻 星 野 暁 子
星野文昭が亡くなってから、6年目になります。私にとって文昭は35年にわたって、人生をともにしたかけがえのない伴侶でした。手術が成功し、ともに歩むことが出来ていれば、再審を継続しこの手に取り戻す闘いを成功させることができたはずです。未来と現在そのすべてを奪った東日本成人矯正医療センターと徳島刑務所の人権侵害甚だしい文昭と家族に対する対応は、とうてい許すことができません。
被告・国の準備書面を読むと、文昭に術後出血があったこと、ショック状態にあったことを否定するばかりで、それならばなぜ文昭が死亡したのかについては、語られていません。
2019年5月30日、午後9時44分、文昭は死亡しました。東日本成人矯正医療センター近くのホテルに泊まっていた私に電話があったのは、その直後です。すぐに駆けつけたのですが、文昭に面会できたのは、午前0時過ぎでした。2時間以上待たされたのです。小川医師の説明によると、「大量の出血を拭きとるのに時間がかかった」ということでした。しかし、診療録によると検死の作業や出血をふき取る作業を、家族との面会を後回しにして優先させたことが明記されています。許しがたいことです。
私は病室に置かれた文昭の遺体にそのまま会えると思っていましたが、出てきた文昭は、既に棺桶に入れられ、死に装束を着せられていました。それも心無いやり方だと思います。
そして、さんざん待たされた挙句、「翌朝10時まで遺体をひきとるように。それができなければ、こちらで処理する」と言われました。たまたま支援者の親戚に葬儀社をやっている人がいて、すぐに連絡し、早朝迎えに来てもらうことが出来ましたが、普通はそんなことはできません。このこともひどい扱いだったと忘れられません。
小川医師からの家族への説明の時に、「解剖を行ってほしい」と申し述べましたが、「うちでは解剖はやっていない」の一言でした。手術が成功したとの説明からわずか2日、なぜ死に至ったのかを知るには、解剖がどうしても必要でした。まるでそれを隠すように、一言で片づけられたことは心外でした。文昭に対する冒涜だと今も許せない気持ちです。
国の準備書面は、既に述べたように、術後出血・ショック状態を否定するばかりで、文昭の死に向き合い、責任をはっきりさせる内容にはとうていなっていません。
特に、私が怒りを感じたのは、被告国の準備書面(15)の67ページに「刑事施設の長の地方更生保護委員会等に対する通知義務を定めた規定であり、被収容者の法的権利利益の保護を直接目的とした規定とは認められない」と書かれている部分です。社会内処遇規則の同文(社会内処遇に関する規則7条1項桂書、同項8号)は、言うまでもなく、仮釈放審理において更生保護委員会が被収容者の正確な情報を把握することを定めており、収容者の法的権利利益の保護を直接目的とした規定であり、その中には無期懲役刑の受刑者も含まれることは言うまでもありません。既に原告の準備書面に明らかなように(「原告最終準備書面」114ぺージ~116ページ)、無期懲役囚である文昭の仮釈放審議を地方更生保護委員会が行刑30年を期し、面接まで行っている以上、当該刑事施設の長(徳島刑務所所長)が、文昭の心身の状況の変化・正確な情報を「社会内処遇規則7条1項8号」に準じ、四国更生保護委員会に報告するのは当然のことです。
死刑求刑と闘って、10万人署名運動の先頭に立った文昭の両親は、既に亡くなり、治男・修三の二人の兄弟が、私とともに原告になってくれました。兄治男は、2019年5月29日医療センターに駆けつけ、文昭に対して最後の呼びかけを行ってくれました。また対質の時に、私が病気で参加できない中で、北海道から裁判に2度にわたって駆け付けてくれました。弟・修三にとって文昭は両親以上に慕い、存在感が本当に大きいそういう関係でした。病気があり、裁判に駆けつけることはできませんでしたが、文昭のことは片時も忘れることはできないと思います。そうした治男と修三は、家族として、原告の一員として、文昭の獄死をともに追求しています。亡き文昭の国に対する損害賠償権を相続して持つ私たちが、原告として訴える権利を持つことは当然のことです。
文昭が亡くなって6年目、沖縄に連帯し、戦争に反対する文昭の闘いを引継ぎ、生きることがようやく出来るようになりました。文昭という死者とともに生きる私にとって、この国賠訴訟は、大きな存在です。裁判の勝利によって、文昭の死の責任を医療センターと徳島刑務所にとらせ、星野文昭の名誉回復を実現しなければならないと思います。そして、獄中の医療の非人間的あり方、被収容者の生命をないがしろにするあり方、人権無視のあり方を、この裁判を通じて変えていきたいと思います。5年かかった裁判の集大成であり、これからの出発点となる判決を望みます。
裁判長、よろしくお願いいたします。
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